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最近の出来事(記事詳細)
「今,世界の大学は―中国の大学教育改革」講演会の開催
― 躍動する中国の現状を反映した報告 ―


教育学部国語教育教授  加 藤 国 安

 愛媛大学国際比較文化フォーラムの主催により,本学と協定を結んでいる中国・遼寧師範大学の朱志君先生(同大学教務部長・政治系教授)をお招きして,公開講演会「今,世界の大学は―中国の大学教育改革」が,2月5日(土)13時30分〜15時30分,教育学部大会議室で開催された。講演会に先立ち,前日,朱志君先生は小松正幸学長・前川尚副学長・壽卓三教育学部評議員らを表敬訪問された。大きく揺れ動く国際情勢の下,今,世界の大学は何をめざし,どんな教育改革を行っているのかと,関心が高まった。


 講演会当日。竹永雄二フォーラム代表,前川副学長,壽評議員の挨拶のあと,朱先生による公開講演会が始まった。朱先生は1998年から5年間,同大学で教務副部長を務められた後,2003年より教務部長に就任されている。まさに激変する中国の大学の教務関係に精通する方であるだけに,その報告にみな集中して聞き入った。


 その要旨を,以下紹介する。
 これまで小中高の教員免許は,師範大学・学院のみが出していたが,目下,それは打破されている。国は条件さえクリアしていれば,総合大学でも教師の養成を認可している。一方,師範大学側も総合大学化に向けての取り組みを行っている。すなわち,いま中国の教員養成大学は,多元化と開放化の方向に変化している。


 遼寧師範大学は教員養成を主として,教育・文学・理学・経済学・管理学・法学・工学などの多様な学科が協調して発展していくことのできる,教育研究型の総合的師範大学をめざしている。また「二度の専攻化」という新モデルを実施中だ。これはまず学科ごとに学生を合格させ一定の学習を経た後,それぞれ専攻に分かれさせ,一定の学習を経ると,もう一度それぞれの専攻に分けるものだ。これにより学生はもう一つの「専攻」を選ぶことができる。かつてのカリキュラムでは,このような選択の機会はなかった。この方式を採用することで,複合型の高い資質をもった教員を育成できると期待している。


 また本学は,現職教員のリカレント教育を強化している。その方式は,できるだけ柔軟にまた多様な形を追求している。たとえば,通信教育方式,カウンセリング方式,クラス編成による全日制の方式など,さまざまだ。


 以下は,質問に対する回答の要旨。


 ○バイリンガル教育について
 2002年以来,私どもの大学では,「五つのバイリンガル研究室」のスタッフを公募し,この方面の教員養成の教育を始めた。その教育方法は学生のレベルにあわせて三段階に分け,クラスを編成している。学生の反応はとてもよい。


 ○授業料の徴収について
 授業料は各学部やコースなどにより,額を異にして徴収している。2000年以降,国から授業料・運営の経済的な経費は減っている。国だけでは不十分なので,私有企業・民営企業に呼びかけて,企業と大学が一体となって,大学の中に学部に相当する組織を作ってきた。いわゆる独立学院だが,これは公の支援を受けながら運営については民間に任されるというものだ。授業料は一般的に高い。


 ○大学評価について
 中国にも大学評価がある。文科省に専門家委員会を作り,そこで大学を評価する。愛媛に来る前,私は中国の二つの大学の評価に参加した。首都師範大学・北京商業工業大学だ。評価の基準は非常にきめ細かくたくさんの項目がある。いくつかご紹介すると,まず自分の大学をどのような大学にしたいのか,基本的なビジョン・目標が審査の対象になる。二つ目はハードの面だ。例えば,図書,実験室などが審査の対象となる。三つ目は大学の教育改革,あるいは教育マネジメント,学生育成のモデルの構築,カリキュラムの再構築など教務関係のものだ。四つ目は,卒業生の質に関する評価だ。とくに師範大学・教育系の大学では,卒業生は半分が高校・中学・小学校の教員となるが,中国の場合,先生は特級教師・一級教師・二級教師などに分けられる。大学の質を評価するにあたっては,卒業生のうち特級教師になったのはどれだけいるか,そこまで追跡調査する。五つ目は,大学の特色があるかどうかということだ。それには優・良・可・不可の4段階がある。特色がないと,優か良はもらえない。特色ある大学にするためには,少なくとも良以上の成績がないとだめだ。こういった評価は大学の名声に影響がある。つまり,他の大学よりやや低く評価されたり,あるいは定員枠が制限されたり,それ以上枠が拡大できなかったりする。


 また本学では,2004年に初めて設立したばかりの「LNU−SMSU 国際商学院」がある。アメリカの西南ミズーリ大学と合同で設立した学部で,この学部では商学関係の人材を育成している。他の学部とは異なって,中国で2年間学んで西南ミズーリ大学でも2年間学ぶ。そして,両方の大学の卒業証書がもらえるというものだ。中国の大学も法人化したので,懸命に努力している。


 ―朱先生の講演をお聴きして非常な感銘を受けた。中国の大学が今どんな状況に置かれているのか,具体的な数字や実態を踏まえてのお話しに,驚くやらまた励まされるやらで,あっという間の2時間だった。どんな質問にも即座に数字を掲げて,我々の納得するような回答を示された。まるで「遼寧師範大学の歩くデータ・バンク」の観があった。またアメリカ・ドイツ・イギリスなどと比較しながら,今日,世界の大学が抱える問題について討議することができ,国際会議にでも出席したような気分になった。


 帰国された朱先生からメールが入った。「すばらしい日本訪問でした。愛媛大学の招聘と友情に深く感謝します。これからも両大学の国際交流を推進していきましょう」とあった。本講演会は,遼寧師範大学をはじめ,多くの方々のご協力によって成功したものである。こうした交流を踏まえて,きびしい時代を生き抜く方向を見い出せればと願っている。


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