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平成20年度質の高い大学教育推進プログラム「教職課程のDPに基づく全学的教員養成改革」中間報告会報告
2010/01/29
平成22年(2010年)1月21日(木)、平成20年度質の高い大学教育推進プログラム「教職課程のDPに基づく全学的教員養成改革」採択プログラム中間報告会が開催されました。250名が収容できる講義室がほぼ満席になるほどの活気のある報告会となりました。
報告会の司会は、教育学部教育コーディネータの松野尾裕先生が務めました。以下、順番に内容を紹介いたします。
1.学長挨拶【愛媛大学長 柳澤康信先生】
愛媛大学が文科省GPに採用された時の秘話を紹介いただきました。このGPを応募するにあたり、「教職課程のディプロマポリシーを作成してはどうか」とご提案されたことなどが披瀝されました。また、愛媛大学の教職課程の取り組みについて「(全国的にも)実質進んでいると思う」と力強いお言葉を頂戴いたしました。
2.趣旨説明とGPの取り組み 【山﨑哲司(教育学部教授)・池野修(教育学部准教授)】
「教職課程のDP(ディプロマポリシー)」についての説明とそれを達成するための、リフレクション・デイ(省察と助言)、「教育実践演習」、支援体制の整備の3点について現状報告が行われました。報告では、社会から教員に求められる資質能力や専門性の養成に対応する取り組みを行うこと、幅広い分野から人材を求める「開放制」などを詳細に説明しました。また、GPの取り組みの一つとしてあげられる「地域連携実習」について、教育学部生以外の参加者の増加や実習の質の向上という成果、地域連携実習と大学授業との関連付けなどの課題が報告されました。
3.実践報告(学生報告)
① ラーニングログ・プラクティスログ・リフレクションログを用いた学習成果のふりかえり 【谷村晴香・三木アカネ(教育学部)】
大学の授業などで学んだ知識・技能を用いて、地域連携実習や教育実習で実践を行い、その実践を振り返ることで多くの学びと課題を見出したとの報告がありました。「子どもたちに応じて叱り方も変えなければいけないことを実感する。」(谷村)、「自己の実践をより専門的に省察できるようになった。」「今後も理論と実践の往還を行う。」(三木)などの成果が語られました。
②「地域連携実習」、「実践講和」からの学び 【中谷優大(理学部)・一色正博(農学部)】
教育学部以外の学生として「地域連携実習」などに参加したことで得た学びが報告されました。「毎回毎回、学ぶことばかりであり、いい刺激をもらっている。」(中谷)「将来に対しての具体的なイメージが持てた。」(一色)など、実践での経験から多くの学びが得られたことの報告がありました。
4.教職支援ルームからみた学生の姿 【教職支援員 杉原薫・木村文】
「地域連携実習」の報告書の質は、学年を追うごとに向上しており、現場実践を行っての成果や課題をもってリフレクションを行っている、様々な戸惑いや不安もあるが、子どもたちと会うことを喜んでいる学生の姿がある、また、社会人としてのマナーやコミュニケーション能力を身につけることができるように支援していきたいなどの発言がありました。
5.現場での体験と教育実践的指導力
【猪瀬智也氏・河合晴美氏(三重大学教育学部)・後藤太一郎氏(三重大学教育学部教授)】
三重大学教職課程での学生の参加活動について報告が行われました。特に、「青少年のための科学の祭典 三重大学大会」における新たな取り組みと学生の関わりについて詳説されました。これらの活動からの学びとして、子供たちの興味関心や楽しく学べる授業作り、他分野と関わることでの視点の広がりなどの課題が取り上げられました。
6.視察報告「フィンランドにおける教員養成から学ぶこと」
【白松賢(教育学部准教授)】
フィンランドのヘルシンキ大学での視察報告がありました。ヘルシンキ大学では、教員資格を取得する学生の64%が学外での実習を行っています。これは、学生たちに多様な実習の可能性を開き、特別なニーズに応じた実習現場を提供する等の理由によるそうです。また、ヘルシンキ大学の教員に教育学部と他学部の連携について質問すると、「2001年に他学部にも教員養成に協力することを義務付けた法案」が通ったことから、現在は、協同的な教員養成を行っている、という回答を得るなど、多くの刺激を得たとの報告がありました。
7.ディスカッション「これからの教員養成と実践からの学び」
司会 日野克博(教育学部准教授)
パネラー
二宮眞由美氏(松山市立八坂小学校教頭・地域連携実習協力校)
角田敏郎氏(松山市PTA連合会前会長・松山市立西中学校PTA会長)
根津知佳子氏(三重大学教育学部教授)
秦敬治氏(愛媛大学教育学生支援機構・教育企画室副室長)
山﨑哲司(教育学部教授)
・地域連携実習協力校の立場から見た、実践での学びの意義や主体的な学びの姿勢の重要性について
・保護者の立場から見た、保護者が求める教員像や保護者との関わりを学ぶにはどうすれば良いのか、について
・三重大学で取り組んでいる地域での学びの実情や課題に加えて、総合大学の利点について
・愛媛大学リーダーズ・スクールの取り組み、教育現場に求められるリーダーの姿や、養成の課題について
・愛媛大学教育GP責任者の立場から見た、今後の教員養成の方向性について
8.識者コメント
川崎豊氏(愛媛県教育委員会義務教育課管理主事)
北須賀逸雄氏(愛媛県教育委員会高校教育課課長補佐)
岡井博之氏(松山市教育委員会学校教育課指導主事)
関谷芳郎氏(松山市立勝山中学校長・松山市中学校長会会長)
田鍋修氏(愛媛県教育委員会常務理事)
・優秀な教員の卵を育てたいという愛媛大学の気持ちが伝わった。学生には、自己を振り返り、相手の立場に立って物事を考えることができるような資質能力を育んでもらいたい。
・教員に求められる資質能力は、教育への情熱、豊かな人間性、自己研鑽ができる力だと考えている。学生時代には、教育に関する問題を突き詰めて考え、自らの見識を身につけておいて欲しい。
・愛媛大学生のやる気や教員の愛情に感心させられた。学生には、この取り組みが当たり前だとは思わず、積極的に自分自身でできる取り組みを見つけてもらいたい。
・生徒たちがしっかりと自分たちの学びを振り返っていることが、素晴らしいことだと思った。現場で学びたいときには、積極的に自分から、笑顔で声をかけることが大切である。受け身のままでは、吸収できない。
・学生たち自身が楽しみながら、自分で選んで自分が目標を立てて取り組んでいる姿を見て、うれしく思った。開放的で選択肢があり、主体的に学生たちが学んでいるなと思った。
9.学部長挨拶 【愛媛大学教育学部長 寿卓三先生】
会の終了に際し、寿卓三学部長より「本学部の状態は必ずしも万全ではないが、よりよい組織を作り挙げてゆきたい、そのために教員もがんばって行かねばならない」との挨拶がありました。
なお、報告会終了後、GPの取り組み内容に関する中間評価会も開催されました。
学生発表を行う三木アカネさん
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ディスカッションの様子
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