愛媛大学代数セミナー

2024年度の講演予定・講演記録

  • 第100回 : 2024年5月17日 (金) 16:30--17:30
  • 場所 : 愛媛大学理学部2号館(数学棟)2階 大演習室(201) (対面開催のみ。参加をご希望の方は直接現地にお越しください。)
  • 講演者 : 若山 正人 (NTT基礎数学研究センタ)
  • 題目 : 光-物質の相互作用と数論
  • 概要 : 数論への興味の一つに,整数の単純さとその構成要素である素数の不規則・複雑に見える構造との乖離の探求があります.提示以来 165 年間未解決なリーマン予想がもつ魅力もここに原点があります.
    一方,光と物質の相互作用にかんする関心は量子情報などにおいても要となっているものです.本講演のテーマは,相互作用の最も基本的なモデルとされる量子ラビ模型とその被覆模型である非可換調和振動子の背後にありそうな数論的構造についての考察です.とくに,ミクロな粒子が集まる際にマクロな性質を理解するための系の分配関数と,そしてスペクトルゼータ関数の特殊値などに焦点を当てつつ未解決問題にも寄り道しながら紹介することが目的です.
  • 第99回 : 2024年4月22日 (月) 16:30--17:30
  • (通常と曜日が異なりますのでご注意ください)
  • 場所 : Zoomによるオンライン開催
  • 講演者 : 原瀬 晋(立命館大学)
  • 題目 : 連分数に基づく準乱数とマルコフ連鎖モンテカルロ法への応用
  • 概要 : ベイズ統計学の分野では,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いた期待値計算が頻繁に現れる.このとき,乱数によるモンテカルロ計算は収束が非常に遅いため,より高い一様性を有する準乱数に置き換えて高速化を図る準モンテカルロ法を適用したい.しかるに,通常の準乱数はMCMC法にそのまま適用することが出来ない.Owen-Tribble(2005)及びChen-Dick-Owen(2011)は,CUD列と呼ばれる点列を用いると,MCMC法による期待値計算に適用できることを理論的に示した.ここで,CUD列の定義は構成的でない.そのため,短い周期の擬似乱数発生法を用意し,一周期使い切った際に現れる格子構造を利用して,CUD列の近似点列として実装する方法が提案されている.
    最近,発表者は,この実装方法の枠組みで,準モンテカルロ法の一様性の指標であるt-値が最適化された準乱数を作成した.その設計に際し,2次元のt-値は有限体上の有理関数の正則連分数展開と密接に関係があり,連分数を用いて準乱数のパラメータ探索を行った.
    本講演では,この準乱数の概要,並びに,MCMC法への応用例を紹介する.