愛媛大学代数セミナー

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2021年度の講演

  • 第84回 : 2022年3月18日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 澤辺正人 (千葉大学)
  • 題目 : 部分群複体とその周辺
  • 概要 : 部分群複体の代表例として,標数 p の有限体上で定義される Lie 型の 群 G に付随する幾何ビルディング B がある。B は G の非自明な p-部分群全体からなる複体とホモトピー同値であり、これはブラウン複体とも呼ばれている。またブラウン複体の可縮性とある種の正規部分群の存在に関する未解決問題 Quillen 予想などもある。部分群複体は群論・代数的位相幾何・表現論などが交わる分野である。ここでは部分群複体の定義から始めて,講演者のこれまでの 結果を含めた部分群複体に関する研究を概観する。加えて飯寄信保氏(山口大)と現在取組んでいるベキ零複体のカバーに関する結果を紹介する。
  • 第83回 : 2022年2月4日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 宮崎隆史 (群馬大学)
  • 題目 : 項数の少ない純指数型不定方程式について
  • 概要 : $1+2^y=3^z$ や $3^x+4^y=5^z$ を自然に一般化した項数3の指数型不定方程式 $a^x+b^y=c^z$ を考える。これは、"二つの(互いに素な)累乗数の和が累乗数になる" 例の探索問題の一つと認識できて、有名なフェルマー方程式の研究に連なるものとみなせる。より一般に、任意項数の(純)指数型方程式は、各項に現れる素因数の個数が有限であることから、ディオファントス近似の理論によって、その解の個数の有限性や、項数が少ない場合には解の大きさの上限評価が得られる。本講演の前半では、解の個数の '最良評価' 問題に関わる既知の研究を中心に、研究手法なども合わせて紹介する。後半では、講演者が最近取り組んでいる研究とその成果について概説する。特に、$c=2$ の場合に解の個数の最良評価を得た Reese Scott 氏の定理(1993年)の別証明について報告する。
    これは Istv\'an Pink 氏(Debrecen 大学)との共同研究である。
  • 第82回 : 2022年1月14日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 梶浦大起 (広島大学)
  • 題目 : 位数120の可解群の difference set について
  • 概要 : 有限群Gとその部分集合Dについて,Gの元をDの二元の差 x^{-1}y を用いて表す方法が何通りあるかを考える。そのとき,表し方の数がどの非単位元でも同じときにDを「difference set」と呼ぶ。具体的に群をひとつ固定したときに,そのdifference setを決定するのは(計算機を用いても)非常に難しい。例えば,5次対称群などは現在でも未解決である。
    本講演では,difference setの基本的な定義や具体例の基本的事項から始めて,講演者らが開発したdifference setの新たな探索法を紹介する。そして,このアルゴリズムを用いてこれまで未解決であった2つの位数120の可解群について,difference setの非存在が証明できたことも紹介する。
    この内容は,広島大学の松本眞氏と奥田隆幸氏との共同研究に基づいている。
  • 第81回 : 2021年12月10日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 大坪 紀之(千葉大学)
  • 題目 : 有限体上の超幾何関数について
  • 概要 : Gaussの超幾何関数およびその一般化は最もよく知られた特殊関数族である。もちろん数論においても重要な対象であり、例えば、モチーフの周期・レギュレーターやL関数の特殊値に現れるということが分かっている。超幾何関数の有限体上の類似については1980年代に研究が始まり、古典的な場合との様々な類似が調べられてきた。この講演では、有限体上の超幾何関数の新たな定義を与え、古典的な場合と類似する和公式、変換公式、積公式などを紹介し、そのモチーフ的な背景について論じる。
  • 第80回 : 2021年11月12日 (金) 17:00--18:00
  • 講演者 : 小田 文仁 (近畿大学)
  • 題目 : マッキー 2-モチーフとコホモロジカルマッキー 2-モチーフ
  • 概要 : Balmer 氏とDell'Ambrogio氏により紹介されたマッキー2-圏とコホモロジカルマッキー2-圏の間の擬関手 P は、マッキー 2-モチーフをコホモロジカルマッキー 2-モチーフにうつします。P によるモティヴィック分解の挙動は、吉田氏により紹介された有限群 G の斜バーンサイド環から可換環 k 上の群代数 kG の中心への環準同型により統制されることが両氏により証明されました。
    両氏による定理の応用として、本講演では、具体的な k について得られた P の挙動に関する結果報告をめざします。吉田氏、竹ヶ原氏との共同研究の結果です。
  • 第79回 : 2021年7月16日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 佐野 薫 (同志社大学)
  • 題目 : 高さ関数の漸近挙動とその一様誤差について
  • 概要 : 代数体上の代数多様体の自己有理写像は,その反復合成を考えることで離散力学系とみなせる.特に多様体上の有理点について,軌道上でのWeil高さの挙動を調べることは数論力学系の分野で重要な話題である.一般に高さの増大のオーダーとしてありうるのはどのような関数かということについては未知の部分が多い.その一つの例として,軌道が有限でない場合に高さの増大の最低のオーダーがlog nであることが予想され,準射影多様体の自己射の場合にはBell-Ghioca-Satrianoによって証明されている.
    今回,射影代数多様体の自己射で力学系次数が1の場合には,高さの増大のオーダーが高々ピカール数の2倍の次数の多項式であることが分かった.
    本講演では高さ関数の増大度を調べる雰囲気を感じて頂けるよう,入門的な部分から解説を行う.
  • 第78回 : 2021年6月25日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 飛田 明彦 (埼玉大学)
  • 題目 : 有限群の共役類と既約指標に関する原田予想
  • 概要 : 有限群の共役類と複素既約指標の関係については、古典的な結果から最近の研究に至るまで長年に渡り多くのことが知られていますが、そのすべてが明らかにされたという訳ではありません。指標表の行列式に関連して、原田耕一郎氏は2015年に「すべての既約指標の次数の積は、すべての共役類の大きさの積の約数である」という予想を提起しました。これは非常に基本的な命題であり、ごく自然に成り立ちそうに思えるとともに、予想が成立する場合にその比は群の何を反映しているのかなどはあまり明らかではありません。
    予想の解決に向けた見通しがない状態での講演でたいへん恐縮ですが、本講演では原田予想に関連して以下の話題を紹介します。まず、対称群・交代群や環積の場合の証明を紹介し、次いで、p-群の場合に共役類の大きさに関する不等式について述べます。最後に、モジュラー表現について、ブロックやその下位不足群との関係を調べます。
    本研究は清田正夫氏との共同研究です。
  • 第77回 : 2021年4月23日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 竹山 美宏 (筑波大学)
  • 題目 : 多重T値の和の母関数について
  • 概要 : 多重ゼータ値の Ohno-Zagier 関係式は,重さ・深さ・高さを固定した多重ゼータ値の和の母関数を,リーマンゼータ関数の値(深さが1の多重ゼータ値)を使って表すものである。この関係式は,確定特異点を3個もつ2階のフックス型微分方程式を,ガウスの超幾何関数を使って解くことにより得られる。
    本講演では,Kaneko-Tsumura によって導入された多重T値について,同様の手法で得られたささやかな結果について報告する。