愛媛大学代数セミナー

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2019年度の講演

  • 第72回 : 2020年1月10日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 安福 悠(日本大学)
  • 題目 : Ru-Vojta不変量と最大公約数
  • 概要 : Schmidtの部分空間定理は,ディオファントス近似の金字塔の1つであり,射影空間上の線形因子に対する局所高さ関数の評価である.射影代数多様体上の一般の因子に対する局所高さ関数の評価を得るため,射影空間への「できるだけ効率のよい」埋め込みを通してSchmidt部分空間定理を活用する方法は色々考えられている.本講演では,そのうちの一つであるRu-Vojtaの方法を紹介し,最大公約数の不等式へと応用する.整数点に限定した場合はJulie Tzu-YuehWang氏 (中央研究院)との共同研究である (arXiv:1907.09324).
  • 第71回 : 2019年12月20日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 小森靖(立教大学)
  • 題目 : 有限多重ゼータ値, 対称多重ゼータ値, および補間ゼータ関数について
  • 概要 : 有限多重ゼータ値と対称多重ゼータ値の間に一対一対応が存在するというのが金子-Zagier予想である. 本講演では, 有限多重ゼータ値については値の母関数を導入し, また対称多重ゼータ値については自然な補間となるゼータ関数を導入することによって, それぞれについて, インデックスが非正の場合を考察し, この領域においては金子-Zagier予想における対応の自然な拡張が成り立つことを示す. また時間があれば, これらのゼータ値および最近研究されている一般化有限多重ゼータ値や一般化対称多重ゼータ値を全て補間するゼータ関数とその性質を紹介する.
  • 第70回 : 2019年11月29日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 桂田英典(室蘭工業大学名誉教授)
  • 題目 : Klingen-Eisensteinリフトの合同とHarder予想
  • 概要 : よく知られているように,$SL_2(\mathbb Z)$に関するEisenstein級数とcusp形式の間にはBernoulli数を割る素数を法として合同があることが知られています。このように,保型形式の間の合同を考えることは整数論にとって興味深く重要な 問題です。
    本講演では,Siegel cusp形式の(一般にはベクトル値の)Klingen-Eisensteinリフトと呼ばれる保型形式と他の保型形式の合同についてお話しします。これはスカラー値の場合は10年ほど前の水本信一郎氏との共同研究によるもので,今回はそれのベクトル値への一般化です。証明の鍵となるのは小島教知氏によるSiegel Eisenstein級数のpullback formulaと 伊吹山知義氏による保型形式の空間上の微分作用素の明示公式です。
    次に,Harder予想についてお話します。Harder予想は重さ$2k+j-2$の$SL_2(\mathbb Z)$に関する原始形式(正規化されたHecke作用素の同時固有関数)のFourier係数が重さが$\det^k \otimes Sym^j$のあるHecke固有形式の固有値とある素イデアルを法として関係することを主張します。今日までこの予想が解かれているのは(私の知る限り)ChenevierとLanessによる$(k,j)=(10,4)$の場合のみです。この予想が難しい理由の一つは上に述べた合同が2つのHecke固有形式の合同ではないことです。
    本講演では$f$のDuke-Imamoglu-IkedaリフトのKlingen-Eisensteinリフト(リフトのリフト!)とある別のリフトの間の合同に関する予想を述べます。(このリフトの存在はスカラー値の時は伊吹山氏によって予想され,本質的にはChenevier-Renardのある結果からベクトル値の場合も含めて示されるのですが,その詳細は跡部発氏のプレプリントarXiv:[math.NT]1810.09089v1にあります。)そして, この予想からHarder予想が導かれることを示します。最後に,最初に述べたことの応用として,私の予想が(それ故Harder予想が)成り立ついくつかの例を紹介します。
  • 第69回 : 2019年10月24日(木) 16:30--17:30
  • 講演者 : 高島克幸 (三菱電機 情報技術総合研究所)
  • 題目 : 同種写像に基づく耐量子計算機暗号
  • 概要 : 大規模な量子コンピュータが出現すれば,これまで広く使われてきた公開鍵暗号が 破られる危険性が指摘されている.それに対する対策として,量子コンピュータでも効率的に解けない数学問題の計算困難性に基づいて,新しい暗号を提案する動きが活発化している.本講演では,その候補である同種写像暗号について紹介する.その暗号演算には,同種写像からなるグラフ上のランダムウォークが使われており,例えば,超特異楕円曲線同種写像から得られるラマヌジャングラフの数理的な性質が,暗号の性能・安全性を理解する上で重要になる.それら数理的側面と共に,SIDH鍵共有と種数1,2のCGLハッシュ関数という暗号技術を紹介する.最後に,本研究分野での私の最近の研究成果にも触れる予定である.
  • 第68回 : 2019年9月6日(金) 10:30--11:30
  • 講演者 : 山田裕史 (熊本大学)
  • 題目 : 佐藤氏の『広田氏の Bilinear Equations について』について
  • 概要 : 1980年に佐藤幹夫は数理研講究録に寄稿している.KdV方程式等の広田型双線型表示に関する記事であり,最後にかなり精密な数表が載っている.初めて見たときから私にとってはミステリアスな表であり,それでも意味を把握しようと長い間,漫然と眺めてきた.ようやく2016年の12月に佐藤氏が何を伝えたいのかが少しわかりかけてきたのである.「KdVの広田方程式は対称群の指標の直交性に他ならない」まだかなりの部分が厳密な数学にはなっていないが,方向性として間違ってはいないと思う.雑談として聞いていただければ幸いである.
  • 第67回 : 2019年7月5日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 都築正男 (上智大学)
  • 題目 : $SL_3(Z)$の明示的なアーサーセルバーグ跡公式とその応用
  • 概要 : ポワンカレ上半平面$H^2$上の2点間の双曲距離のみに依存する滑らかでコンパクト台を持つ関数$h$ (point pair invariant)は上半平面$H^2$における$SL_2(Z)$の合同部分群$\Gamma$の基本領域$\Gamma \bsl H^2$上の2乗可積分関数の空間にトレース族の積分作用素$T_h$を定義します。いわゆるセルバーグ跡公式は$tr(T_h)$を$\Gamma$の共役類から決まる$h$(或いはそのHarish-Chandra変換)の汎関数の無限線型和で明示的に表す公式ですが、非コンパクトリーマン面のワイル法則、セルバーグ型ゼータ関数の構成や素測地線定理など多くの問題への応用をもちます。
    5次元対称空間$H^5=\SL_3(R)/SO(3)$に作用する$\Gamma=\SL_3(Z)$に対して、同様の明示的な「跡公式」を証明しようという試みはいくつかあったものの、完全に書き下された公式はこれまで知られていなかったようです。 今回は、(1) $GL_3$のアデール化の「アーサーの不変跡公式」から出発することで、3次ユニモジュラー群$\SL_3(Z)$について明示的な跡公式を書き下し、(2) $\SL_3(Z)\bsl H^5$のワイル法則や熱核の微小時間展開への応用についてお話します。
    (若槻聡氏、Werner Hoffmann氏との共同研究)
  • 第66回 : 2019年6月25日(火) 16:30--17:30
  • 講演者 : 石川勲(理化学研究所)
  • 題目 : 非線形力学系から生成される時系列データ間の作用素論的側面からの研究
  • 概要 : 複数のデータ間の距離の定義は機械学習や画像認識といった応用の分野において非常に重要な問題である。本研究では、時系列データの距離について、それらのデータが非線形力学系から生成されるというモデルを据えて考察した。力学系が与えられると、あるHilbert空間(再生核Hilbert空間)の上にPerron-Frobenius作用素と呼ばれる線形作用素が自然に定義されるが、これを用いると距離を与える枠組みを構築できる。本講演ではこの枠組みに関する紹介を中心に、近年の力学系に付随する作用素を用いたデータ解析に関する先行の手法やそれらと本研究との比較、及び、それらに纏わる純粋な数学的問題やそれに対して得られている我々の結果、さらに、確率的な効果も考慮したランダム力学系への拡張も紹介したい。
    本研究は池田正弘氏(理研)、河原吉伸氏(九大)、澤野嘉宏氏(首都大)、橋本悠香氏(NTT)、藤井慶輔氏(名大)らとの共同研究に基づく。
  • 第65回 : 2019年5月17日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 鈴木航介(広島大学・日本学術振興会特別研究員PD)
  • 題目 : デジタルネットの超一様性
  • 概要 : 単位超立方体内の点集合のディスクレパンシーは、点集合の各点が超立方体内にどの程度一様に散らばっているかを測る量である。ディスクレパンシーが小さい点集合は超一様点集合と呼ばれ、準モンテカルロ法という高次元数値積分手法に応用されている。本講演では、デジタルネットという有限体上のベクトル空間の構造をもつ点集合に注目して、そのディスクレパンシーにまつわる代数的、数値積分的および組合せ論的性質を紹介する。
  • 第64回 : 2019年4月26日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : Henrik Bachmann (名古屋大学)
  • 題目 : Multiple harmonic q-series at roots of unity and their connection to finite & symmetrized multiple zeta values
  • 概要 : In this talk, we will discuss multiple harmonic q-series evaluated at roots of unity. The motivation to study these series comes from recent results on the connection of finite multiple zeta values (FMZV) and symmetrized multiple zeta values (SMZV). We start by giving a small introduction into the theory of multiple zeta values and then discuss their finite analogues, which were recently introduced by Kaneko and Zagier. After this, we introduce the notion of finite multiple harmonic q-series at roots of unity and show that these specialize to the FMZV and the SMZV through an algebraic and analytic operation, respectively. This talk is based on joint work with Y. Takeyama and K. Tasaka.